雨の日はそばにいて抱きしめて
「・・・っ」
紙袋を覗き込んだだけで
瞬時に崩壊した涙腺
中からそっと取り出すと
テーブルの上に置いた
それは
鍵付きの透明ケースに入れられたままの
・・・ペアリング・・・
カリーナに行列を生んだ展示品だった
「ど、うした、のっ」
「これな、俺が初めて作った
恋とのペアリングだ」
「・・・っ」
荒削りな幾何学模様の幅広リング
中央にはラピスラズリが埋め込まれている
鍵付きのケースに入れた上に
鍵付きのショーケースで展示するならと預かったペアリング
あの日夢中でシャッターを切って
手にするカップルが幸せであるようにと願った
それが・・・私の?
宙は財布の中から鍵を取り出すと
透明ケースを開けた
「ほら」と
左手を取ると薬指に通した
「・・・ブッ」
「・・・クッ」
途端に吹き出したのは
薬指にはブカブカだったから
「こんなに指、太くないから」
「だってサイズ知らね」
照れ臭そうな宙は
薬指から指輪を抜き取ると
人差し指に通した
「仕方ねぇな」
不服そうに笑うと
「死んでも外すなよ」その指輪ごと口付けた
「うん」
素直に頷くと
「え?」
宙は酷く驚いた
「なに?」
「いや・・・素直だからさ」
工房でのことを話していないから
半信半疑の様子の宙
それでも
「浮気したら即別れるからね」
私からの宣戦布告に
「上等だ」
スッと目を細めて顎をしゃくった