雨の日はそばにいて抱きしめて
嫌だと言いながらもハッキリとした拒絶までしない恋に
部屋の中へ入れて貰ってからは
8年前の浮気疑惑からパーティーまでを話した
俺に囚われていて欲しいと願ったことが
恋にとってのトラウマで
ずっと前に進めてなかったと知って
少し胸が痛むと同時に
少しホッとしたのも事実
しかし・・・
別れたと解釈したらしい恋は
恋人が居たという
「浮気だぞ?」
そう言う俺を責めたけれど
恋がまた俺の腕の中に戻るなら
全部帳消しに出来る
そう思ったのに
その“元カレ”が恋の部屋にやってきて
喧嘩を売った俺は
恋の怒りに火をつけて
簡単に追い出されることになった
「何やってんだ」
自分の想いばかりを押しつけて
辛い思いをさせた恋に寄り添うつもりが逆効果
そのままタクシーを止めると
爺さんにメッセージだけ送って家へと帰った
堅苦しいスーツを脱ぎ捨てると
作業着に着替えて工房へ足を向けた
カウンターに置かれた恋の携帯は
俺の物と同じ機種だった
「お揃いを作るか」
8年前には買ってやることすら出来なかったペアのモノを
今ならこの手で作ってやれる
抱きしめた恋の温もりを思い出しながら
恋を想って・・・
恋の為だけに・・・
工房の隅で俺と全く同じ携帯カバーを作ることに没頭した