みだらなキミと、密室で。
普段、髪の毛を結ぶ時は下の方でサッと結んでばかり。
だからこうやって高い位置で髪の毛をアレンジするのはそもそも滅多にないのだけれど、それに気付いてくれたことに、内心嬉しくなってる自分がいて、バカだなと呆れてしまう。
単純すぎる。
さっきまであんなに嫌だ嫌だと思ってた挙句、あからさまに嫌な態度だったくせに。
「貴重じゃん、海風のうなじ」
「ちょ、いちいち変な言い方しないでよ」
『1階です』
エントランスに着いたエレベーターのドアが開いて降りるタイミングですかさず遥琉に突っ込む。
「事実じゃん。結んでるところあんまりみないし」
「……バイトの時は結んでるし」
っていうか、遥琉が公園に来なくなったあの日から、私の変化なんてなにも知らないくせに。
知ったような口聞いちゃって。
『結んでるところあんまりみない』
まるで、離れてた間も私のことを見ててくれてたみたいな。
そんなことあるわけないのに。