みだらなキミと、密室で。



「……肩」

「んー」

「ねぇ、遥琉。肩」

「んー」

遥琉の目的地は謎のまま、遥琉についていくようにバスに乗り込んだけど。

隣のこの人……。

席に座るなり、人の肩を枕がわりに寝やがるんですが?!

バスの中で大きな声で怒鳴るなんてできないし。

小声で何度も訴えるけれど、まるで聴いていない。
何なんのよほんと……。

遥琉の髪の毛からいい香りがしてそれが私の鼻をくすぐる。

不覚にもドキッとしてしまって。

遥琉の頭が私の肩に触れていて、整理券を持つ遥琉の指先は知らない間に妙に男の人になっていて。

大昔この手と毎日のように手を繋いでいたなんて信じられない。

「遥琉、人のこと枕がわりにするのやめてくれる?っていうか遥琉が起きてないとどこで降りるか私わかんないし」

「……起きてるよ」

「がっつり目瞑ってんじゃん」

「だから起きてるって、ほら」

そう言って私の肩から頭を離した遥琉は、目を瞑ったままこちらに顔を動かした。

いや、全然起きてねぇー。

っていうか……。

バサバサの睫毛に、整った鼻筋。

目瞑ってても綺麗な顔なんだなぁ。顔だけね、顔だけ。
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