みだらなキミと、密室で。
*
「……肩」
「んー」
「ねぇ、遥琉。肩」
「んー」
遥琉の目的地は謎のまま、遥琉についていくようにバスに乗り込んだけど。
隣のこの人……。
席に座るなり、人の肩を枕がわりに寝やがるんですが?!
バスの中で大きな声で怒鳴るなんてできないし。
小声で何度も訴えるけれど、まるで聴いていない。
何なんのよほんと……。
遥琉の髪の毛からいい香りがしてそれが私の鼻をくすぐる。
不覚にもドキッとしてしまって。
遥琉の頭が私の肩に触れていて、整理券を持つ遥琉の指先は知らない間に妙に男の人になっていて。
大昔この手と毎日のように手を繋いでいたなんて信じられない。
「遥琉、人のこと枕がわりにするのやめてくれる?っていうか遥琉が起きてないとどこで降りるか私わかんないし」
「……起きてるよ」
「がっつり目瞑ってんじゃん」
「だから起きてるって、ほら」
そう言って私の肩から頭を離した遥琉は、目を瞑ったままこちらに顔を動かした。
いや、全然起きてねぇー。
っていうか……。
バサバサの睫毛に、整った鼻筋。
目瞑ってても綺麗な顔なんだなぁ。顔だけね、顔だけ。