みだらなキミと、密室で。
私の顔に向かって伸びてきた遥琉の手。
その手の親指のはらが、軽く私の口端を拭った。
「なっ……」
「興奮しすぎ」
ふはっと笑いながらそう言って、親指についた特製ソースを、今度はそのまま自分の口元に運ぶ。
「んま……」
んま、じゃなくて……。
あんた今……自分が何したのかわかってるの?
途端に鼓動が速くなって、手先は麻痺したみたいに感覚がなくなってハンバーガーを落としそうになる。
遥琉は、呆然としてる私にお構いなしに自分のローストビーフ丼を食べ始めて「これもうま〜〜!」なんて声を出している。
こいつ……ほんっとに。
「ちょ、海風、交換」
ローストビーフが乗ったどんぶりをこちらに寄せてきた遥琉。
シェアをしようって魂胆なのはわかっているけど、私の脳はさっきの出来事でいっぱい。
動揺して思うように声が出ない。
「なにボーッとしてんの?あ、やっぱり腹いっぱいなんだろ。安心しろ。海風の分は俺が……」
「ダ、ダメ!」
遥琉にハンバーガーを取られそうになり慌ててバーガーを持つ手に力を込める。