みだらなキミと、密室で。

「嫌、だった?」

「……っ、」

嫌に決まってる、はずなのに。

目の前の遥琉にイライラして今すぐ突き飛ばしたいのに。

それよりもはるかに、心臓の音がうるさいくて、身体が固まったように動かないし、言葉も出てこない。

「海風?答えないともっとすごいキスするけど」

「……はっ」

なんで。

なんでそういうこと言うの。

遥琉は私のことどう思っているからそういうことができるの。

質問攻めにしてやりたいのに、あまりの心拍数上昇に、思うように声が出ない。

何か言わないといけないのに……。

そもそも今すぐ突き飛ばせばいいのに。

じゃなきゃ、されるがままじゃない。

頭の中ではわかっている。

間違っている。

こんなの───。

それでも、

今日一日、遥琉と過ごした時間を思い出せば、心地よかった笑顔ばかりで。

もっと、一緒に過ごしたくて。

また、遥琉とあの時みたいに笑いたくて。

意地や強がりも、もう限界なんだ。

ムカつくしイラついてばかりだけど、本当は同じくらい遥琉と話せることが一緒にいることが嬉しくて。

もう、離れて欲しくないって、思っちゃってるよ。

自分の中にピンッと張っていた糸が切れる音がした。
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