みだらなキミと、密室で。
「……ごめん」
「へっ……」
触れる代わりに遥琉の弱々しい声が聞こえて、思わず間抜けが声が出た。
なんて?
今、ごめんって言った?
「冗談」
そう言って目を晒す遥琉。
じょうだん。
その言葉が脳内でこだまする。
遥琉は私から身体を離すと「海風も早く食べれば」なんて言いながらケーキをフォークですくいだした。
その間も私の目を見てくれない。
そうやってすぐになにもなかっようにしようとするところ、昔から、遥琉の悪いところだと思う。
大事なことであればある程。
遥琉が私の前から消えてからの空白の時間も、キスも。
なかったことに、私はできないよ。
気付いてしまったから。
キスしてくれなかったことに対して、私は今、ショックを受けている。
あんなに腹立っていてムカついていたはずなのに。
期待してしまっていたんだ。
もう後戻りできないところまで、気持ちが奪われている。
「遥琉」
私は、ロールケーキを一口食べてから意を決して口を開いた。