みだらなキミと、密室で。



結局昨日はあれから遥琉とはまともな会話はできないまま別れた。

遥琉の話したいことって、弁償しなくていいってことだけだったんだろうかとか考えることは色々あるけれど。

それよりも今は……。

翌日のバイト終わり。

私は、キッチンの伊月さんを避けるかのように1日の仕事を過ごした。

出来るだけ、自然と。

最初はすごく警戒していたけれど、思ってたより伊月さんは普通で。

昨日のこと何も言ってこないし、多分、もう遥琉のことはそんなに怒っていないのかもしれない。

なんて。

そんな気持ちで制服を着替えてロッカー室を出た瞬間───。

───ドンッ

「ちょっといいかな、海風ちゃん」

私を先へ通さないように廊下の壁に手をついた伊月さんが満面の笑みで立っていた。

死んだ。

目の奥が笑ってないのがバレバレです、伊月さん。

「……な、なんでしょうか、」

「とぼけないでよ。俺、海風ちゃんが嘘つく子とは思わなかったな〜」

「あはは、」

「詳しく話聞くから」

「へっ、ちょ、まっ、」

せっかくロッカー室を出られたのに。

伊月さんに手を掴まれたまま、ロッカー室に戻る形になってしまった。
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