みだらなキミと、密室で。

エレベーターの中にいる男女は、降りる気配がまるでなくて、何度も唇を重ねる。

幸い、女の子の長い髪の毛と角度で、生々しい部分は見えなくて済んでるけど。

明らかにキスしてる。

どう見たってキスしてる。

ってか、エレベーターが動いててふたりきりならまだしも、もう止まってんですけど?!

ドア開いてるんですけど?!

おふたりそろってどういう神経なんですかね?!


「コホンッ」

「あっ……」

ここに人がいますよ、と伝えるためにエレベーターから目線を逸らして軽く咳払いをしたら、女の子がようやく私に気付いたらしく、声を発した。

いや、さっさと気が付けおバカ。
「あっ」じゃないから。

「……えっと、す、すみません」

女の子は気まずそうに私に少しだけ笑いかけると、すぐに男の手を引っ張ってエレベーターから出てエントランスを早足で後にした。
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