みだらなキミと、密室で。



「私、夕方からバイトがあるから」

カフェから出て遥琉と伊月さんふたりと落ち合ってからすぐに乃々歌ちゃんがそう言った。

「じゃ、時間も時間だし、ここでお開きとしますか。俺と乃々歌ちゃんは帰るけど、後はおふたりさんご自由に」

「え、ちょっ、」

「あれ?それとも海風ちゃん、俺とまだ一緒にいたい?」

「いえ……」

そう答えれば、伊月さんは「そんなはっきり言われると俺だって傷つくんだけど」と言いながら、

私の髪をクシャと軽く撫でて「じゃーねっ」と乃々歌ちゃんとふたり手を振ってその場を後にした。

乃々歌ちゃんの話を聞いてから、今、遥琉とふたりきり。どんな顔をしていいのかわからない。

もし、乃々歌ちゃんの話しが本当だったら。

『今、遥琉くんが海風のことどう思ってるかはわからないけれど』

話しの最後に乃々歌ちゃんはそう言った。

まるで、真相は私の口から聞けと言われているような。

考えれば考えるほど隣の遥琉を意識して、心臓の音がうるさい。

おさまれ、と何度も心の中で叫んでいると、

「……帰ろっか」

遊園地の雑音にかき消されそうな小さな声で遥琉がそう言った。
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