みだらなキミと、密室で。
不器用な守り方



沈黙。

帰りのバスの中でも、降りてからの道のりも、私たちはずっと無言だった。

何か話さなきゃ、早く聞かなきゃ。

そう思えば思うほど、また拒絶されたらと思うと口が重くなる。

遥琉が何か言ってくれればいいのに。

伊月さんに会ったあの日から、明らかに様子がおかしいもん。

それとも、私が意識しすぎてそう思うだけ?

歩幅とか、息づかいとか、普段は気にならない色んなことが気になる。

どうしよう。

あと、数メートル歩けば、私たちのマンションについてしまう。

今日のチャンスを逃せば、今度こそ本当に遥琉とは話せなくなるかもしれない。

ギュッと何度も手に力を入れて、息を吸って吐いてを繰り返して、

遥琉の名前を呼ぶタイミングを見計らう。

遥琉───。

「みち……」

「ちょっと、寄ってもいい?」

私のか細い声が、遥琉の声に寄ってかき消された。

「へっ……」
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