みだらなキミと、密室で。
不器用な守り方
*
沈黙。
帰りのバスの中でも、降りてからの道のりも、私たちはずっと無言だった。
何か話さなきゃ、早く聞かなきゃ。
そう思えば思うほど、また拒絶されたらと思うと口が重くなる。
遥琉が何か言ってくれればいいのに。
伊月さんに会ったあの日から、明らかに様子がおかしいもん。
それとも、私が意識しすぎてそう思うだけ?
歩幅とか、息づかいとか、普段は気にならない色んなことが気になる。
どうしよう。
あと、数メートル歩けば、私たちのマンションについてしまう。
今日のチャンスを逃せば、今度こそ本当に遥琉とは話せなくなるかもしれない。
ギュッと何度も手に力を入れて、息を吸って吐いてを繰り返して、
遥琉の名前を呼ぶタイミングを見計らう。
遥琉───。
「みち……」
「ちょっと、寄ってもいい?」
私のか細い声が、遥琉の声に寄ってかき消された。
「へっ……」