みだらなキミと、密室で。

ドキドキドキと胸がうるさい。

コンクリートに囲まれたそこは、やけに音がよく響く気がして、私の心臓の音も遥琉に聞こえちゃうんじゃないかって。

「えっと……」

どうやって呼吸していたっけ、目線ってどこに向ければいいんだっけ、

昔、1番落ち着く場所だったはずのトンネルは、この数年の間に1番落ち着かない場所になってしまった。

私の正面に座る遥琉と、向かい合わせに座る私。

曲げられた遥琉の足の長さは昔とは全然違う。

あの頃だって、狭い空間だったのに。

さらに狭い、近い。

暑い。

身体が、熱い。

光が当たらないここだと、遥琉の顔がなんだか色っぽく見える気がして、

うるさい胸の鼓動をさらに煽る。

目の前にいる遥琉は、泣き虫で怖がりで、私の後ろに隠れていた男の子ではなくなったんだ。

膝の上に置かれた腕の筋とか、大きな手のひら、角ばった指。

完全に、男の人。

変わってしまった遥琉が嫌いだと言い聞かせてきた。

だけど、やっぱり。

……好きなんだ、彼のこと。

トクトクトクと速いスピードで脈打つ胸の音がそれを痛感させる。
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