みだらなキミと、密室で。
遥琉 side
違う。
違うんだ。
俺は、やっと、海風にあの日のことを話すのを決意した。
────
『ウミちゃん』
小3までだっただろうか。俺は海風のことをそう呼んでいた。
そう名前を呼んだとき『なーに?遥琉』と俺の名前を呼びながら見せてくれた彼女の目一杯の笑顔が大好きだった。
寂しいも怖いも、海風の笑顔ひとつで吹っ飛ぶ、本当にそんな子だった。
でもいつからか
『あのね、遥琉。学校で私のことウミちゃんって呼ぶの、やめてほしいの』
『遥琉、しょっちゅう私のクラスに来すぎだよ。もう3年生なんだから一人でなんでもできなくちゃ』
海風からそんなことを言われるのが増えていった。
最初はよくわからなかったけど、学年が上がるにつれてなんとなくわかるようになっていった。
よく知らない女の子から好きだと手紙をもらうようになって、
バレンタインデーの日は引き出しに何個かチョコが入るようになって。
女の子たちに囲まれるようになって。
ついに───。
『……遥琉、私たち学校で話すのやめよう』
いつも俺に笑顔だけを見せていた海風が、眉毛を下げて無理した笑顔でそう言った。
彼女のそんな顔を見るのは生まれて初めてで、猛烈にこっちが泣きそうになったのを今でも鮮明に覚えている。