みだらなキミと、密室で。
小4の冬。
『え、おじさん帰って来てないの?』
『うん。最近ずっとパパとママ、ケンカばっかりでさー。ママなんて大人なのに子供みたいに泣きながら騒いじゃって。恥ずかしいよね。あ、もしかして遥琉のところまで聞こえたりしてない?うちのママの声』
『そうなんだ、大変だね。ううん。上の階だもん聞こえないよ。隣の人はどうかわかんないけど』
『え〜どうしよう、隣の千代ばあちゃんに聞かれてたら。恥ずかしい〜。あ、でも千代ばあちゃん耳遠いから多分大丈夫だ』
『ハハッなにそれ』
海風が家のことで困っているのはわかっていたけど、つい笑ってしまった。
海風は自然と俺を笑顔にさせる子だった。
今思えば、海風は子供なりにぎくしゃくしていた両親にものすごく気を使っていたと思う。
もちろん俺にも。
でもそれはきっと無意識。
本来は落ち込んでしまうような話なのに海風の言葉に俺は思わず笑ってしまって。
でも俺がそこで吹き出すと、海風は安心したような顔をして俺の手をギュッと握ってくれたんだ。
誰よりも優しくて、強がりで、思いやりのある子。
自分より人の笑顔を大切にできる子。
だからこそ大人になったら強くなって、今度は俺が海風を守りたい。
そう思っていた。
矢先のことだった。