みだらなキミと、密室で。

どうしたんだろうと、中を覗けば。

目をつぶって静かに寝息をたてた海風が丸くなっていた。

「……うみ、」

起こそうとさらに近づいて、もう一度彼女の名前を呼ぼうとしたけど、

その顔を覗いて、名前を飲み込んだ。

海風の頬が、涙で濡れていたから。

海風の泣き顔を見たのなんて初めてだった。

何があったんだろう、どうしたんだろう。
聞きたいことはたくさんあった。

だけどそんなことよりも、泣きながら眠ってしまったであろう海風を見て、

猛烈に触れたい、と思ってしまったんだ。

手を繋ぎたい、抱きしめたい……。

海風の唇に目がいって。

……もっと、触れたい。

チャンスだと、今しかないと思った。

俺以外の誰のものにもしたくなかった。

泣き顔でさえ、なによりも愛おしくて。

海風は俺のだから───。

“最高の友達”

俺はそんな風に思ったことなんて一度もない──。

彼女の唇に、自分の唇の熱を押し付けた。
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