みだらなキミと、密室で。
何秒そうしてただろう。
3秒くらいか、それより短いか。
フワッと海風の香りが広がって俺の鼻をかすめて、彼女のわずかな熱が自分の唇に伝わって。
ハッとした。
慌てて身体を離して。
海風は起きなかった。
さっきまでのバクバクとした苦しいほどの胸の音と、興奮はなんだったのか。
今度はたちまち、自分のしたことの間違いに、一気に冷や汗が止まらなくなった。
本当は、すぐにでも起こして事情を聞くべきなのに、自分の欲望のために、状況を利用してしまった。
何かがあって海風は泣き疲れて寝てしまったはずなのに。
なにやってるんだと思った。
どこまでもポンコツ。
壊してしまった。
守れなかった。
裏切らないって言ったのに。
俺だけは、海風の最高の友達だって言ったのに。
友達にはこんなことしちゃいけない。
友達はこんなことしない。
彼女がこれを知ったらどう思うか、途端に怖くなった。
嫌われたくない、でも、嘘をついたまま友達になんて戻れそうにない。
それに……。
本当は、周りの目ばかり気にする海風に対して、若干のイラつきもあった。
周りがなんといおうと俺たちは俺たちであればいい。
誰の目も気にしないで、俺が海風を欲しているみたいに、海風だって『遥琉がいればそれでいい』って堂々と俺のことをもっと求めてくれればいいのに。
海風はそうしなかったから。
俺には海風しかいないのに、海風には、俺以外に大切なものがたくさんあるように見えて。
俺はまだ熱を持つ唇をグッと噛んで、公園を後にした。