みだらなキミと、密室で。

「マンションの掲示板に貼ってあった。行く?」

「えっ、行きたい!」

花火大会か……。
昔に、一度だけ、うちの両親と遥琉と行ったのを覚えてる。

詩音さんのピアノのコンクールがあるとかで、遥琉がうちで一緒にお留守番することになって。

急遽、ママたちに誘われて行ったんだよね。

「懐かしいね、遥琉と昔一回だけ行った。小2だったかな」

「ん。覚えてる」

「ふっ、遥琉、ひょっとこのお面怖がって号泣してたもんね」

お店の人が泣き止まそうと慌ててひょっとこのお面をかぶっておどけて見せたら、余計になっちゃって。

あの時の戸惑ったお店の人、今思うとおかしい。

「あれから未だにひょっとこトラウマだわ。どーしよ泣いたら」

「ひょっとこで泣く男子高校生の図の方がトラウマでしょ」

そう突っ込めば、ハハっと軽快に笑ったかと思えば、

「ねぇ、海風、浴衣きてよ」

片方の口角をニッと釣り上げて遥琉がそう言った。
< 267 / 300 >

この作品をシェア

pagetop