140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空
「結局、名前はわからないままだね」
「そうだな…背嚢があれば記名のあるものが他にもあるんだけどな。もう持てなくてどこかに置いてきたか、先にここを通った者が持ち去ったか…」
「容赦ないね…。あたしたちが言えた義理じゃないけど」
「皆、生きるのに必死なだけさ。誰も悪くない」
「うん…」
衣服の記名は薄く擦れて読み取れなくて、彼の名前を呼ぶことはできなかった。
それでも、心からの哀悼の意と感謝を込めて、手を合わせた。
ハイノウ、は、話の前後からしてたぶんリュックのことだと思う。
中に身元の分かるものが入っていればなるべく本土に持ち帰りたかったとか、乾パンでも入っていればよかったのにと言っていたから。
あたしと食糧を分けて何日も過ごすのは、やっぱり避けたいんだろうな。