140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空

火が点かなきゃ炊けないとか、お米を洗う水もないとか、そんなところからもう違う。

当たり前だと思ってたものが、ぜんぜん当たり前じゃなかった。

生き物を殺さなきゃお肉は食べられないとか、煮沸したりしなきゃお水も飲めないとか、そんな当たり前のことも気にしないで、自分がそれをしないで生きてこられたのは、あたしじゃない誰かがそれを代わりにしてくれてるからなんだよね。

ネットがあれば何でも買えるとか、そんなふうに何不自由なく暮らしていられたことのありがたみが、今ならわかる。


ようやくテント張りくらいは出来るようになったけど、便利な生活から放り出されたあたしはあまりにも無知で、無力で、昇さんがいなかったらもうとっくに死んでいたと思う。


「明日は晴れるといいね」

「そうだな」


ポリポリとお米を噛む音と、虫の声が、こだまする夜。

見上げたら、生い茂る大きな樹々のすきまに瞬く星が見えた。

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