140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空
向井さんが、あたしを見て急にハッキリと話しだした。
弱弱しくはあるけど、さっきまでみたいな途切れ途切れじゃない声で。
「頼む。側にいてやってくれないか」
「え?あたし?」
「弥生ぢゃん、おっ母に見えでんだ。…頼むな」
ふたりが、天幕を巻いて眠ってしまった。
毛布がないから、今夜からあたしたちは天幕を寝袋にして寝るのだ。
先に休んだ山根さんのイビキと虫の鳴き声が大きくて、向井さんの声が聞き取りづらい。
もっと近くに、と、向井さんの背中に手を差し込んで頭を自分の膝に乗せる。
軽い…
男の人って、たぶんもっと重いよね。
やせ細ってこけた顔の向井さんが、あたしの膝の上で安心したように笑った。