140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空
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昼間の雨が嘘みたいに止んでいる。

だけど長い雨に冷やされた森を通る風は、弱った向井さんから容赦なく体温を奪う。

膝の上でミノムシみたいな向井さんがカタカタと歯を震わせている。


「母ちゃん?今年はカエルが鳴ぐようになっでも随分と寒いんだねえの?田んぼは大事け?」

「え?あ、ああ。じきに温かくなるよ。だいじだ」


普段より、方言の混じった言葉で話す向井さん。

本当にお母さんと話しているつもりなんだな。
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