140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空

「男親のいない家は、長男は残すって話を聞いたんす。だけど戦争が始まった時、俺はまだ兵役の年齢じゃなかったから、兄貴が徴兵されてしまうんじゃないかって、それで志願兵になったんす」

「お兄さんのため…」

「なのに啖呵切って家出同然で志願したのに、俺はどうも変わったものに腹がついていかないようで度々下すもんだから、実戦向きじゃないとなってしまったんす」

「そっか。それで本当のことが言えなくて、操縦士になったって」

「俺、そんなことまで言ってたんすか。参ったなぁ、こんなにベラベラ弱音ばっかで、男のくせに情けねぇっすね」


笑ったような、泣いたような顔。

この時代の男の人たちは、女の前で泣くなんて恥だと思ってるんだよね。

でも、あたしは令和の女だ。
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