140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空
向井さんの目は、もうどこも見てない感じだった。
蚊の鳴くようなか細い、枯れた声もそこで途切れた。
「向井さん!?ちょっと、死んじゃだめだよ!昇さん、みんな、起きて!向井さんが…っ!」
あたしは慌ててみんなを呼び起こした。
「逝かせてやってぐれ、最期が弥生ぢゃんの膝の上なんて、幸せすぎるじゃねえが」
「でも、でも…」
「魚たらふく食って女の膝で死ねるなんて、ここじゃ考えられないもんなぁ」
「上が聞いたら何と言うかな」
「構うこたぁねぇよ。死に方を選べるんなら俺は敵もろとも!それがだめなら腹上死って決めてんだ。マラリアやら飢え死になんて御免だぜ」
「はは、山根らしいな」
「向井ぃ、先行っで待っでろよ……」