140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空
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その夜、待望の焼きガニを食べた後、早めに休んだ山根さんが、これまでにない高熱でうなされ始めた。

訳のわからないことをうわごとのように呟く山根さんを、あたしたちはやっぱりただ見ているしかできなかった。


「山根ぇ、耐えろよ、一晩耐えりゃ、なんとかなんだがらよぉ」

「頑張れ、山根、頑張れ」


だけど、あたしは見てるだけなんて、嫌だ。

天幕に潜り込んで、軍服の中に着ていたロンTを脱ぐ。

星明りを頼りに、すぐそばにある湿地へ歩いて、それを浸した。

きれいな水じゃないし、きれいな布でもないけど、ないよりはきっと…
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