140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空
雨の日は暗くなるのが早くて、あと少しのはずのゲニムには着かないまま日没になった。
あたしは唯一の出来ること、天幕張りをいつものように済ませて、渡河で使い果たしたカロリーをもうこれ以上使わないようにと、天幕製の寝袋を準備する。
「阿久津の形見だ」
「え?」
そう言って、昇さんがくたくたのバナナを差し出してきた。
「渡ったらみんなで食おうと思って、3本だけ軍服に挟んでおいたんだ」
「昇さん……」
「阿久津のぶんは半分に分けよう」