140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空
それは、潰れて、灰色みがかった中身が飛び出した、どうみてもゴミみたいな姿のバナナ。
だけど、朝食べたのと同じ味がした。
最高の朝だった、あの時の空気が蘇る。
『しっかり食っで、河を渡っだらゲニムだ』
『松田、俺らは死なねえよ?行ぐべ』
…………っ。
「死なないって…、言ったのに…っ。阿久津さんの嘘つき……っ!」
ゲニムはすぐそこなのに……
あたしたちはまた大切な仲間を失った。
阿久津さんの大きな笑い声も朗らかな歌も、もう聞こえることはない。
バナナの甘い香りが天幕の中に空しく漂っているだけだった。