140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空

死んでしまった人より、生きている人の方がものすごい異臭を放っている。

優しくしてあげたかったけど、何日も洗っていない体臭と排泄物の臭いが混ざって、強烈すぎて無理だった。


ゲニムの前に逝ったみんなはこんなじゃなかったから、もしかしたらまだ幸せだったのかもしれないとさえ思った。


あたしは昇さんに生きていて欲しいと思いながら、嫌なことも考えてしまっていた。

もし生きていても、さっきみたいな異臭がするような状態だったら?


寒気がした。

昇さんにじゃない。

無理かもしれない、なんて考えが頭をよぎった自分にだ。


鼻から、嫌な臭いが消えない。

頭から、嫌な考えが消えない。

べっとりと、湿った枯れ葉みたいにまとわりついて消えない。

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