140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空

誰かの役に立ちたいとか、そんなこと考えたこともなかったあたしが、死を待つ向井さんや山根さんの話を聞いてあげられただけでも、少しはここに来た意味があったのかなとか、その程度だけど。

だけどそんな小さな寄り掛かり合いだけでも、人が生きた意味にはなるってことを知った。


「ここに来たこと自体、初めはあたしにとって本当に意味不明だった。でも、ここに来なかったら、あたしは気付かなかったし、変わらなかったと思うの」


たった数日でも、たったひとことでも、関わっただけでそれはもう意味なんだ。

昇さんと出会ったことが、5人で歩いたあの数日が、あたしを変えた。


気付かせてくれたんだ。

ここでの全てが、あたしに、教えてくれた。

クリックひとつでなんでも揃うことのすごさを、蛇口をひねれば飲み水が出るすばらしさを、そして、食べ物のありがたみを。

ううん、食べ物だけじゃない。
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