140度の彼方で、きみとあの日 見上げた星空
少しでも早く遠くに行きたくて、あたしは走った。
パシャパシャと跳ね上げる水しぶきが、ジャージをまくった腿にかかる。
「待てってば」
晶はあたしを呼んでいるけど、小学生の葉月から目を離せないせいか追ってはこない。
「はぁ、はぁ」
気が付けば、ふくらはぎの真ん中くらいまで海水がきてる。
遠浅なせいかまだまだこんなに浅いけど、晶たちからはだいぶ離れたし、駐車場はもう見えないくらい遠い。
さっきのダイバーみたいな本気装備の人も、いつのまにかいなくなっている。
海の方を向いたら誰もいなくて、この世界にいるのがあたしだけになったみたいな錯覚。