一生、俺のそばにいて~エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで~
ずっと病院のベッドで過ごして苦しみながら死ぬくらいなら、匡のそばで笑って一生を終えたい。
それが私の最期の願い。
だから、うちの両親も匡の家族も協力してくれたのだ。
だが、兄には病気のことをギリギリまで内緒にしておくよう親に頼んだ。
こうやって帰って来てしまうから。
「私がもう長く生きられないから、慌てて帰国したんでしょ?」
厳しく追及すると、兄は暗い表情で小さく返事をした。
「……うん」
「お兄ちゃん、いくら私が病気だからって仕事放り出すのはよくないよ」
心を鬼にして叱れば、兄は目から涙を零しながら反論しようとする。
「でも……」
「でもじゃない!どんな時でも仕事を投げ出しちゃダメ!」
たとえ私が死んでもね。
「璃子……」
「私はね、お兄ちゃんが設計する建物が好きなの」
兄の目を見てしっかりと伝えたら、彼はまた号泣した。
そんな兄の頭を優しく撫でてやる。
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