一生、俺のそばにいて~エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで~
泣きながら頭を下げるおばさんにスーツのポケットからハンカチを出して差し出した。
「謝らないで下さい、おばさん。迷惑だなんて思っていません。璃子を僕に預けてくれてありがとうございます」
璃子と過ごす大事な時間を俺にくれたのだ。
その後、どうおばさんと別れて会社に戻ったのか覚えていない。
なぜ璃子がガンになんか……。
あいつまだ二十二だぞ。
ギュッと拳を握り、何度も思った。
来客、打合せ、デスクワーク、会議。
午後のスケジュールをひたすらこなしていく。
会議が終わって副社長室にひとり戻ると、なにかに当たらずにはいられなくて……。
「なんであいつなんだ!」
喉を詰まらせながら声を出して、怒りを壁にぶつけ、ドンと叩いた。
その音に驚いて長谷川がノックもせずに部屋に入って来た。
「今のはなんの音ですか?」
「悪い。たまたま壁に手がぶつかった」
無機質な声で返すと、長谷川は心配そうに俺の顔を見る。
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