一生、俺のそばにいて～エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで～

すると、彼も頬を緩めたが、その顔はどこか引きつっていた。
「弟さんと佐々木さんから匡君の噂は聞いてるよ」
「どんな噂だか。では、急ぎますのでこれで失礼します」
横目で璃子をチラッと見ると、久野さんに視線を戻して軽く頭を下げた。
「璃子行くぞ」
彼女の手を引いて車に乗せると、そのままマンションに帰る。
玄関を上がると、急に璃子が大声を出して俺の右手を掴んだ。
「ちょっと、なにこの痣！」
「あっ……壁にぶつけた時の」
右手の甲が紫になっていて腫れている。
「ちょっとこっち来て」
璃子が大騒ぎして俺をリビングのソファまで連れていき、氷を持ってきて俺の手を冷やした。
「これでしばらく冷やして」
「サンキュ」
礼を言うと、彼女は俺をじっと見た。
「痛くなかったの？」
「全然感じなかった。でも、今はちょっと痛いかな」
言われるまで感じなかった。
「バカね。二日酔いでボーッとしてたんでしょう」