一生、俺のそばにいて~エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで~
お前の病気のこと考えてた……なんて口が裂けても言えない。
「そうかもな。洋食屋から出る時、久野さんとなにかあったのか?」
彼が璃子の手を掴んだのが気になった。
「え?……特になにもないよ」
俺の質問に彼女はゆっくり視線を逸らす。
嘘つき。
「なにもないならいい。お前、先に風呂に入ってくれば?」
「うん。そうする」
璃子は俺から離れバスルームへ行く。
彼女がいなくなると、親父に電話をした。
「こんな夜遅くに悪い。今日、おばさんから璃子の話を聞いたんだ。彼女が入院していた病院知ってたら教えてくれないか」
もっといい病院なら璃子も助かるかもしれないと考えたのだが、親父が口にしたのは国内でも有名な病院の名前だった。
親父がその病院を紹介し、ガンの権威の先生に診てもらって最先端の抗がん剤治療が行われたようなのだが、運悪く璃子には薬が合わなかったらしい。
それと、大学の方は中退して、バイトで行っているという話だった。
そのバイトは直の口利きらしい。
電話を終わらせると、しばらく放心していた。
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