一生、俺のそばにいて~エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで~
その衝撃で、持っていた先生の論文が床に散らばる。
「せ、先生?……どうしたんですか?」
ビックリしながら久野先生に尋ねたら、彼はどこか思いつめた表情で私を見る。
「もう堪えられないんだ。君に会うのが今日最後かと思うと……。諦めようと思った。でも、一緒に仕事してたら忘れたくても佐々木さんのことが頭から消えなくて……」
洋食屋で『僕と付き合わないか?』と言われた時は、先生が私に同情しているのかと思った。
でも、本当に私のことが好きだったのか。
「先生……」
この状況に戸惑いを感じずにはいられない。
私は匡が好きだから先生の気持ちには応えられない。
どうすれば先生を傷つけずに断ることができるだろう。
「教え子に手を出すなんて悪いことだと思ってる。でも、僕も人間だし……この気持ちは止められない。佐々木さんが好きなんだ」
いつも穏やかな先生が、私に自分の感情をぶつけてくる。
先生が初めて男に見えて怖かった。
心臓はバクバクで、上手く息が出来ない。
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