一生、俺のそばにいて~エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで~
俺が突然現れてビックリしたのか、久野さんは呆気に取られた顔をした。
「八神……」
彼を睨みつけ、語気を強めて言い放つ。
「久野さん、自分勝手過ぎますよ。彼女が嫌がってるのがわかりませんか?」
璃子は少し震えながら俺のコートをギュッと掴んでいた。
「……済まない」
久野さんは璃子に目を向けると、蚊の鳴くような声で謝る。
本当は一発殴ってやりたい。
研究室で自分の教え子に襲いかかるなんて最低だ。
だが、自分の怒りを晴らすことよりも、璃子を守る方が先決。
早くこの場から離れよう。
ハーッと息を吐いて心を落ち着けると、彼女の手を取った。
「璃子、行くぞ」
璃子は少し動揺しながらも、久野さんの方を振り返って挨拶する。
「……うん。先生、お世話になりました」
自分が危ない目に遭ったのに、律儀に別れの挨拶なんかするな。
俺の警告をちゃんと聞いていなかった彼女に腹が立つ。
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