一生、俺のそばにいて~エリート御曹司が余命宣告された幼なじみを世界一幸せな花嫁にするまで~
そんなの初耳だ。
でも、確かに先週末福岡に行ったくらいで、私がここに来てから匡は海外に出張になんか行っていない。
私が彼の仕事を邪魔してる?
「あなたがもう長く生きられないことに同情はしますが、あなたがいるから副社長は自分のやりたいように仕事ができない。副社長が言えないから私が言います。もうこれ以上彼の邪魔はしないでください」
中川さんの言葉が胸に突き刺さる。
ショックでなにも言い返せなかった。
彼女はスーツケースを手に持って出て行く。
ガチャッと玄関のドアが閉まると、崩れるように床に座り込んだ。
私のせいで匡は仕事が思うように出来なかったのか。
考えてみたら、私……自分勝手だったな。
匡の都合も考えずに、私の願いを彼に押し付けていた。
自分が死ぬからって言い訳して……。
彼は優しいから追い出さなかった。
私、匡にも周りのみんなにも甘え過ぎた。
「匡……ごめんね」
涙がポタッと手に落ちた。
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