俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「……あ、足は本当に大丈夫ですから。今後気をつけます」

吸い込まれそうな目に抗うように小声で呟く。

視線を逸らしたいのに、頬に手を添えられているせいで逃げられない。


どうしてこんな風に触れてくるのだろう。


「足だけじゃないけどな」

不穏な響きを持つ返答は聞き流したい。


「どうして、足を痛めているってわかったんですか?」

怪しげな方向に向かいそうな話題を変えるため、声を上げる。

「いつも浦部さんは真っ直ぐ背筋を伸ばして早足で歩いているのに、今日は少し違ったから」

「え……?」

見たらすぐわかった、と迷いなく言われて言葉に詰まる。


……どうして、わかるの。そんなの今日まで誰にも言われた記憶がない。


胸の奥に言葉にならない気持ちが込み上げて取り乱しそうになる。


「婚約者の状態くらいひと目見たらわかる、当たり前だろ?」

ふっと眉尻を下げて、迷いなく言い切るその姿に返す言葉が見当たらない。
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