俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「婚約の件は知っていたのか?」

平坦な声で尋ねられて、迷いながらも頷く。

「……後輩に教えてもらって、記事を読ませてもらいました……すみません」

正直に謝罪を口にする。

嘘は吐きたくないし面白がって記事を探したわけではないが、知らないうちに調べられたら不快なはずだ。

「どうして沙和が謝るんだ? 気にしなくていい、皆知っている話だ」

愁さんがふわりと相好を崩す。


その時、白いシャツに黒のサロンエプロンを身に着けた男性店員が水とメニューを運んできた。

私たちはアイスティーを注文し、店員が離れた後、彼が再び口を開いた。


「婚約破棄の理由は知ってるか?」

いきなりの直球に目を見開き、首を横に振る。

「俺と千奈さんは親が小さい頃に決めた許嫁同士だった。といっても我が家はそれほど乗り気ではなく、辺見家のほうが熱心だった。辺見家も同じ外食業を営んでいるからな」

言われてみると、辺見という家名に覚えがあった。


当社の取引先ではないが、外食産業界の中では板谷ホールディングスには及ばないとはいえ大企業だ。
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