俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「……沙和が戸惑うのもわかる。まずは失恋を癒すリハビリだと思ってくれても構わないし、俺を利用してもいい。だから俺を拒絶せずにチャンスをくれないか」


リハビリ? チャンス?


「……そんな失礼な気持ちで誰かと付き合ったり、ましてや婚約なんてできません。第一、愁さんはそれでいいんですか? 交際は面倒なんでしょう?」


それは恋愛感情なの?


何度も心の中で問いかけているのに、実際に口にできない。


この人が私をそこまで欲してくれる理由がやっぱり理解できない。

どうしても真意がはかれない。

そもそも私に辺見さん以上の魅力があるとは思えない。


「これから俺を知ってくれたらいい。そのうえで婚約者として俺との未来を考えてほしい。どんな理由でも俺は沙和を離したくない……やっとたったひとりの人を見つけたから」

懇願するかのように甘く言うくせに、綺麗な目は真剣な光を帯びて恐れさえ感じる。


どうしたらいいのか、なにが正解かわからない。

けれど、この人の手の温もりはとても心地よくて、この手を離したくないと本能的に思ってしまう。


……ほとんどなにも知らない、出会って間もない大企業の御曹司。

でもなぜか嫌いにはなれなくて惹きつけられる。

大人なのにどこか奔放で、振り回されて気持ちは乱高下するけれど、そんな自分も嫌いじゃない。


最初に散々な姿を晒したせいか、この人のそばにいるとなぜか余計な力が抜ける。
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