俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
それならこの申し出を受け入れてもいいのではないか。

もうひとりの私が心の中で囁く。


これまでずっと何事も段取りを踏んで慎重に歩いてきた。

自分に納得のいく答えを見つけてから行動してきた。


けれどそれがもたらした自分の姿はどこか窮屈だった。

好きな人に気持ちすら伝えられなかった意気地のない自分。


私にはこの人がとても眩しく見える。

愁さんのように想いを素直に口にできるようになりたい。


そばにいたら少しは近づけるようになるだろうか。

このよくわからない揺れ動く気持ちに答えが見つかるだろうか。


その考えに後押しされるように、無意識に首を縦に振る。

途端に花開くように彼が口元を綻ばせた。


「ありがとう、絶対に大事にする。これからよろしく」

とろけそうな甘い目で見つめて、綺麗な指でそっと頬に触れる。

その仕草がまるで壊れ物に触れるように繊細で胸が苦しくなった。


「よろしくお願い、します」

小さな声で返事をすると小さく可愛い、と呟かれて、ますます顔を上げられなくなった。
< 137 / 227 >

この作品をシェア

pagetop