俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
6.『婚約者』のドレスと小さな棘
その後、私たちはカフェでそのまま軽い昼食をとった。


この店のオーナーと愁さんは知り合いらしく、先ほど給仕してくれた男性がオーナーだと言われた。

給仕のタイミングも絶妙だったし、混雑しているにもかかわらず、私たちの前後のふたりがけテーブル席は空席のままになっていた理由がわかった。


お勧めだと言うチーズサンドイッチをいただいた後、会計時にオーナーの男性が自己紹介してくれた。

精悍な顔つきの男性はすべてを知っているかのように愁をよろしく、と屈託なく言ってくれた。

そのセリフに再び頬に熱が戻る。


「沙和もパーティーに一緒に行かないか?」

カフェを出ると唐突に言われた。

「辺見さんのパーティーですか?」


社長としての立場から、城崎さんとともに出席するだろうとは大方予想していた。

館長という職には社交も必要なのだな、とぼんやりと考えていたくらいだ。


「俺は沙和と一緒に行きたい」

「でも私は辺見さんとはほぼ初対面ですし、マナーも……」


そういった華やかな世界とは無縁の生活を送ってきた私には、知識も経験もない。

改めて育ってきた環境も住む世界も違うのだ、と実感してしまう。

そんな私たちの関係は果たしてうまくいくのだろうかと、不安がよぎる。


「それは気にしなくていい、そこまで堅苦しいものではないはずだ。……この機会に過去ときちんと折り合いをつけて、女嫌いの噂も払拭したい。だから一緒に参加してくれないか?」
< 138 / 227 >

この作品をシェア

pagetop