俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
連れて行かれた場所は有名な高級ブランドショップだった。


先に車を降りた愁さんがドアを開けてくれる。

お姫様にでもなった気分だけれど、休日の大通りでこんな目立つ行為をして注目されないはずがない。

周囲からの凄まじい視線が突き刺さり、居たたまれなくなる。


しかもこの人は、目を瞠るほどの容姿をしている。

行きかう女性たちはうっとりした視線を投げかけてくるが、そんな視線をものともせずに、堂々と私の手を引き店内に入っていく。


それからは驚きの連続だった。

彼は煌びやかな店内を躊躇もせず闊歩する。

妙齢の女性店員が奥のこじんまりと整えられた個室に、滑らかな動作で案内してくれる。


「突然申し訳ない」

愁さんの謝罪に準備はできております、とチーフバッジを付けた女性店員が答えた。

名札には(つつみ)と記載されていた。


「それでは浦部様はこちらに」

戸惑う私に穏やかな声がかけられる。


「大丈夫、ここは姉貴もよく利用している店だから。楽しんでおいで」

その言葉に背中を押されてぎこちなく歩きだす。


なにをどう楽しめというのだろう。

もう今日はこんな出来事ばかりだ。

一日中着せ替えごっこをしている気分になる。
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