俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
店を出るとすでに日が傾いていた。


大量の荷物を積み、津田さんの待つ車に乗り込んだ後、支払金額を教えて支払わせてほしい、と言うといたずらっぽく見つめられる。


「パーティーに付き合ってもらうのは俺だ。婚約者にプレゼントするのは当たり前だろ?」

「それ以外のものもありましたし、なによりこんなに高価なものはいただけません」

泣きそうになりながら反論する。

金額を想像するだけで身震いしそうだ。


「それなら俺のわがままだと思って受け入れてほしい。ほかの服はこれからデートで着てほしいし、今後も一緒にパーティーに出てほしい。そのためだと思ってくれないか?」

そう言って私の指を取って絡めてくる。

その温もりに、引いたはずの熱が蘇る。

絡めた指先に羽のように軽いキスをされる。

形のよい唇が触れるたび、鼓動が高鳴っていく。


「それでも、これはいただきすぎです!」

「じゃあ礼をもらおう……キスしていいか?」

「さ、さっきから指に……」

「唇に決まってるだろ?」

もう片方の親指でそっと私の唇をなぞる。


その感触に背中に痺れが走る。

驚きすぎて瞬きすらできない。


「……社長。失礼を承知で言わせていただきますが、それ以上迫りますと浦部様に逃げられますよ」

忠告に愁さんがニヤリと口角を上げる。

「津田、報告しておく。俺たちは婚約者同士だからその心配は皆無だ。第一逃がさない」

「それはよかったです。私の心労がひとつ消えました。ただしくれぐれも自重はしてください。浦部様、末永く社長をよろしくお願いいたします」


末永くって、その言葉おかしくないですか……。

ああもう、逃げ場所がない。


今日一日の目まぐるしい変化に頭はもう許容範囲を超えてしまっている。
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