俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「そろそろ食事に行こうか」

「残念ですが、社長。先ほど会長からお呼び出しがございまして、至急会社に戻るように言われております」

津田さんの報告に、愁さんの表情が一気に不機嫌なものに変わる。


「……なんの話だ? しかも、どうして今日なんだ?」

「私にはわかりかねますので、直接お伺いください」

地を這うような低音にも津田さんは慣れているのか、動じない。


黒髪をイラ立たしげにかき上げてはいるが、私を見つめる目に剣呑な雰囲気はなく、悲しそうにさえ見えた。


即座に車を降りる準備をしだすと、絡めた指先にもう一度キスが落とされる。

「家まで送る。食事はまた今度一緒にしよう」

上目遣いに見つめられて胸がざわめく。

男性なのにどうしてこんなに色気があるのか教えてほしい。


愁さんは自宅マンションの部屋の前まで律義に送ってくれた。

「次に会えるのを楽しみにしてる」

「はい、あの、こんなにたくさんいただいてしまって……どうお礼をすればいいか」

大量の荷物は自室の玄関の中まで、愁さんが自ら運び入れてくれた。

その量に戸惑いと申し訳なさを隠せない。
< 144 / 227 >

この作品をシェア

pagetop