俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
『私も愁も我が家もそんなもの、これっぽっちも重要視していないわ。大事なのは当人同士の気持ちよ。無理やり引き合わせたってうまくいくはずないもの』

『でも……』

『実はね、さっきメッセージをもらう前に愁と話していたの。あの子、沙和ちゃんの話をする時はいつも聞いたことがないくらい優しい声をするの。恋の力は偉大ね。弟の本気が伝わってきて嬉しくなったの。これから愁をよろしくね。義妹になってくれる日を楽しみに待っているわ』

優しくも恥ずかしい言葉に即座に反応できなかった。

じわじわと胸に温かな気持ちが広がる。


けれど、小さな不安の種は残る。


脳裏にふとよぎる辺見さんの面影。

板谷家にとって辺見家はどういう存在なのだろうか。

なにより何度も言われた愁さんの本気とはどういうものなのだろうか。


でも臆病者の私はそのすべてを口に出せず、ただただ肯定の言葉を返すしかできなかった。


「うん、反対されなかった。むしろ応援された」

親友の質問に返答する。

頼子さんとの会話を回想しつつ答える。

つかみどころのない、もやもやした気持ちの正体が今はまだわからず、すずには伝えられない。

「ふうん? ならいいけど……でもその元婚約者の考えがよくわからないんだから気をつけなさいよ。今週末、パーティーなんでしょ? なにかあったら我慢せずに板谷さんに言いなさいよ」

心配してくれている親友に大きく頷いた。
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