俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「そうなんですか……それは意外です。さすが婚約者についてよくご存知ですね」

課長は困ったような表情を浮かべる。


……もう、愁さんったらなにを言い出すの!


由真ちゃんへの婚約宣言により、濱田課長を含めた一部の人たちにはすでに婚約について知られている。

あの日、応接室付近には東京営業部の担当者もいたので仕方ない話なのだけど。


「ええ。とても可愛らしい、大切な婚約者なので」

照れもせず堂々と言い切るその様子に鼓動が暴れ出す。

頬が熱い。

「すみません、沙和に飲み物を渡したいので少し失礼します」

「ええ、どうぞ。お引き留めしてしまってすみません」

「いえ、では」

にっこりと魅力的な笑みを浮かべるこの人は本当に策士だ。

私も慌てて頭を下げてその場を離れる。


ほんの少し人気の少ない会場の端に誘導され、彼を軽く睨む。

「……なんだ?」

「なんだ、じゃないです! なんで課長にあんな言い方をするんですか! 私のやけ酒話まで持ち出して!」


「面白くなかったからに決まってるだろ」

綺麗な二重を細めて、不機嫌そうに言い返される。

「お前、あの男の前で照れたような表情をしてただろ。なにより俺の知らない沙和を知ってるのが気に入らない。しかも失恋相手だしな」
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