俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「どうして私に構うの……!」


必死に声を絞り出す。

目に涙が滲む。


「なんであの色のドレスを選んだの? どうして私を辺見さんへの当てつけにするの? なぜ嘘をつくの? 正直に話してくれないの? ふたりで会っているならそれでいいじゃない、私をこれ以上振り回さないで!」

「……沙和?」

「私はあなたのおもちゃじゃない。リハビリなんてできない!」

子どもの癇癪のように一気に気持ちをぶつける。


こんな場所で感情的に叫ぶ私は大人の女性からは程遠いし、とてもみっともない。

ここまで誰かに気持ちをむき出しにして感情を爆発させた経験はない。

いつも感情は理性で抑えてこれた。


「どうして、いつも片想いなの……? どうしたら好きになってもらえるの? もうこんなつらい想いは嫌なのに……」

弱々しく漏れた声は掠れて、あふれ出した涙が頬を伝いこぼれ落ちる。


泣きたくなんかない。

泣いたってこの想いが成就するわけじゃない。

状況が変わるわけでもないとわかっている。


ただの幼稚な八つ当たりだ。

でもこの張り裂けそうな胸の痛みはどうしたら癒されるのかもうわからない。


「……好きだから」


唐突に、穏やかな声音で言われて目を瞠った。驚きで涙が止まる。


「沙和が好きだ、心の底から」


……なにを言っているの?


理解できずに固まってしまった私をなだめるように、言い聞かせるように、もう一度ゆっくり言葉を紡ぐ。

そうっと骨ばった指が頬に触れ、顎へと滑っていく。
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