俺の妻は本当に可愛い～恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています～
「今、なんて……」

「沙和が好きだと言った」

「……からかってるの？　今、辺見さんと会っていたでしょう？」


話の辻褄が合わない。

誤魔化されているとしか思えない。


「会ってはいたけど、沙和が考えているような関係じゃない。何度も言うが、俺は千奈さんに恋愛感情はない。そもそも自分から告白したのも、焦がれるほどの想いを抱いたのも沙和が初めてだ」

ふわりと口元を綻ばせて愁さんが優しく言う。


見つめ返した目には真摯な光が宿る。

その目が嘘をついているようには到底思えない。

止められない小さな期待がふつふつと心の奥底から湧き上がり、凍てついた心がゆるゆるとけて熱い想いに流されそうになる。


「……本当に……？」


微かな恐れとともに力なく問うと、しっかりと頷かれる。

「……ドレスの件は申し訳なかった。伝えるべきだとわかっていたんだが、沙和の気持ちがわからなくて……自信がなくて言えなくなった」

「私の、気持ち？」


手が、心が震える。

この人はなにを告げようとしているのだろう。


「失恋したばかりの沙和に強引にリハビリだとこじつけて婚約者になった。それ以外にも千奈さんの件もあるし好意を持ってもらえるか不安だった……だから逃げられないように、外堀を完全に埋めて囲い込もうとしたんだ」

カッコ悪いな、といつも自信に満ち溢れていた目を伏せて自嘲気味に言う。


意外にも強引で物騒な方法に驚く。

こんな弱々しい姿は初めて見る。

この人は本当にあの板谷社長なのかと目を疑いたくなるくらい意外なものだった。
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