俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
タクシーが停まった場所はあの日、逃げ出したホテルだった。


「ここ……!」

「俺と沙和の始まりの場所だろう? 今日はここで一緒に過ごそう」

握られた手と見つめられる目が熱くて、呼吸が苦しくなる。


車を降りて歩きだすと、荷物を持ってくれた。

フロントに寄らない愁さんに違和感を覚えると、最近はここに寝泊まりしていると衝撃的な告白をされた。

仕事の都合と、すぐにでも私に会いに行けるようにしたかったからだと照れもせずに言われた。


案内された部屋はセミスイートで、広々とした室内には大きなソファとセンターテーブルが置かれていた。

その奥には小さな書斎のような場所がある。

閉じられたドアの奥は寝室だろうか。

ぼんやりとした柔らかな照明が部屋の中を照らし出す。


このホテルは板谷ホールディングスの所有だと聞かされ、腰が引けた。

この人の肩にはそのすべてが背負われているんだ。

そう思うと、改めて恐れにも似た尊敬の気持ちが大きくなる。


部屋に足を踏み入れた途端、長い腕に抱きしめられた。


「沙和、もう離したくない」


ついばむようなキスを受けて、心臓が早鐘を打つ。

愛しさが溢れ出す。


「……私もずっと一緒にいたい」

「……俺の限界を試してる?」


困ったような声を漏らして、さらに胸に強く引き寄せられる。

耳に届く、速めの鼓動に泣きたいくらいに安心してドキドキする。
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