俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「あの日もそうだった。失恋して悲しいはずなのに、好きになった相手の幸せを願っていた。一生懸命諦めようともがいてた。正直、失恋相手にそんな風に想うなんて最初は信じられなかった」

「だって私が課長を想うように、課長も婚約者の方を好きだったわけだから……それは仕方ないし……」


そっと頬に大きな手が添えられて、額に優しいキスが落とされた。

「普通は皆、自分の恋愛を一番に考える……千奈さんのようにね」


愁さんの過去の恋を想うと、胸が絞めつけられた。

私の考えがわかるのか、小さく首を横に振る愁さんの目は迷いがなく、なにかを後悔しているようには見えなかった。


「きっと千奈さんは俺の気持ちに気づいていたんだと思う。中途半端な気持ちで婚約を引き受けてしまった申し訳なさは今もある。……あの日、失恋して泣いている沙和を抱きしめて、どんな悲しみからも俺の手で守りたいと思った。涙を拭うのは俺だけでありたいと願った。そんな衝動を感じたのは初めてだった」


ドキンドキンドキン――あり得ないくらいに速い鼓動が響く。

胸の中にじんわり広がっていく熱い想いに声が出なくなる。


「泣くのも笑うのも、俺のためだけであってほしいと願った。そんな身勝手な想いに戸惑った。あの瞬間、俺は沙和に恋をしたんだ」
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